【第10回】人材育成における大切なポイント(2)

2026-09-08 10:17:07 経営コラム

前回は人材育成における大切なポイントを4つ、説明しましたが、今回はその続きを説明していきます。

 

5. 「教育ツール」を用意する

 

指導・育成を進めるにあたって、その場で口頭だけで教えることはよくありますが、それではせっかくの指導・育成が非効率的になってしまいます。例えば、新人4人に各々、育成担当者をつけます。何のツールもなく、各々の育成担当者に任せきりであったら、どうなるでしょうか。できる担当者についた新人は期待通りに成長し、できない担当者についた新人はいつまで経っても成長しない、こんなことが十分に起こりうるのではないでしょうか。

 

そこで、人材育成を進めるにあたっては、「チェックリスト」や「マニュアル」などを用意し、教える人によってバラツキが生まれにくくなるようにします。「チェックリスト」や「マニュアル」はいわば、最高の「教育ツール」、「教科書」になるのです。作成するのにはそれなりに時間がかかりますが、作成後は効果絶大です。きちんとしたマニュアルを作成するのは大変だという人には、形式に拘らないメモ書き程度のマニュアルをお勧めします。作成に大きな負担がかからないため、とっつきやすいと思いますので、是非お試しださい。

 

6. 社会人としての「判断軸」を教える

 

現場において指導・育成することは、仕事のやり方を教えることだと思っている人も多いかと思います。それは決して間違いではないのですが、仕事のやり方の前に、あるいは、仕事のやり方と同時に、社会人としての「判断軸」、つまり、社会人として、自社の社員として、「判断」するための拠り所となる考え方(軸)のことです。この「判断軸」は早いうちにしっかり叩き込まないと、いつまで経っても主体的で自律的な社会人になれません。非常に重要な考え方であると認識してください。それでは、社会人としての「判断軸」には、具体的にどんなことがあるのでしょうか。

①   あいさつ(社会人の基本のキ)

②   時間を守る(同上)

③   他人視点(相手の立場に立って考える)

④   組織・チーム(仕事は組織・チームで行うもの・チームワーク)

⑤   全体・全体像(全体を見る・全体を考える・全体最適)

⑥   利益(会社は利益を上げる存在・利益を意識した行動)

⑦   コスト(コスト意識・ムダなコストは使わない)

⑧   コンプライアンス(法令遵守・社会の期待に応える)

⑨   CS(顧客満足・顧客を起点に考える)

⑩   自社の経営理念・ビジョン(自社が何を目指しているのか)

などが挙げられますが、これらのことをしっかりと身につけさせてください。

 

7. 指導者が「教え方」を身につける

 

指導者が説明しても、受け手が理解できないでは、指導の意味もありません。指導者が「何を」、「どのように」教えるのかを「準備」していないと、このようなことは起こってしまいます。そこで、指導者が事前に、知識を「整理」して、「体系化」する必要があります。会社に「マニュアル」がなければ、「自分なりのマニュアル」を整備することによって、知識の整理と体系を図ります。要は、指導するにしても、事前の「準備」が大切であるということです。

 

研修を受けることによっても、指導・育成の基本を学ぶことができます。例えば、「OJT指導者研修」、「説明力向上研修」、「ティーチング研修」、「コーチング研修」など、指導すること、説明することに主眼を置いた研修がお勧めです。

 

指導する人にもう一つ、押さえておいて欲しい大切なことがあります。それは、「教える順番」を間違わないことです。それは、

①   最初に、仕事の「全体像」を教える

②   次に、個々の仕事の「意味」・「目的」を教える

③   最後に、仕事の「やり方」を教える(やり方は最後でよい)

ことです。「全体像」と「意味」・「目的」を伝えることによって、習得スピードが格段に変わります。

意味も分からず機械的に覚えるよりも、意味を知って覚えるほうが、記憶が促進されます。

 

8. 人材育成の「風土」を醸成する

 

人材育成は、個々の現場で、個々の人が、いくら一生懸命頑張っても限界があります。個の力が分散して、大きな力にはならないものです。人材育成は、チームをあげて、組織をあげて、もっと言えば、会社をあげて行う全社的な「プロジェクト」であると認識すべきです。そのように、会社全体で人材育成に取り組もう、組織全体で取り組もうという「風土」を醸成していくことが、人材育成の定着には必要不可欠ではないでしょうか。現場単位では、育成担当者に任せきりで、他の人が無関心ではいけません。私は、「新人を皆で構ってあげなさい。そうすれば、早く成長するから」とよく言っていましたが、このような雰囲気、風土をつくりあげていってもらいたいと思います。更に言えば、会社や組織の「トップ」が人材育成に熱心であることも、人材育成を進めるうえで重要です。トップ自らが育成しようという気にならないと、下の人がいくら熱心でも、人材育成はなかなか上手くいきません。「トップ」こそ、人材育成に最も熱心でいてほしいと、切に願います。(執筆:現場経営の達人)