ゴルフをやられる方は耳にしたことがあるかもしれませんが、「ドライバーは魅せるもの、パットは稼ぐもの」というゴルフの格言があります。この言葉の意味は、ドライバーによる豪快なスイングと圧倒的な飛距離は多くのギャラリーを魅了することができるが、実際に良いスコアであがって賞金を稼ぐには、地味ではあるものの、パットが入らないとダメだということです。
この言葉を企業経営に当てはめた場合、「売上は魅せるもの、経営管理は稼ぐもの」ということが言えるのではないでしょうか。この言葉は、今まで様々な企業経営、特に企業再生に携わってきた経験から、私が勝手につくった造語です。再生企業や業績が厳しくなった企業にほぼ共通して言えることは、売上が急激に減少した場合は別にして、売上がそれなりに上がっているにも拘わらず、業績が悪化してしまったということです。
私は、そのような企業の事業計画を策定する際には、必ずといっていいほど、「売上重視の経営から、利益重視の経営への転換」というコメントを記載してきました。売上拡大にばかり気を取られ、経営管理を疎かにしてきた結果、業績が苦しくなり、苦境に立たされた会社がいかに多いことか。売上を伸ばし事業を拡大することによって、周りから良く見られたいというのが、経営者の願望であるのは理解できるのですが、足元を固めながら、しっかりした経営管理体制を構築しなければ、結局は利益が出ないどころか、会社存続の危機に陥ってしまう可能性すらあります。
経営管理とは、がんじがらめに管理することではなく、経営(=利益を出す)に必要不可欠な管理全般を適正に行うことを言います。経営とは、「売上を最大に、コストを最小に」、「入りをもって出を制す」という言葉があるように、売上を上げつつ、効率的な経営によってコストを最小限に抑え、利益を捻出することです。私は、上場したベンチャー企業の営業本部長と、上場企業の経営管理本部長の両方を務めましたが、これらの経験により、経営管理がいかに大切か、身をもって知りました。
主な経営管理を挙げると、
・コスト管理
・原価管理
・仕入管理
・在庫管理
・人的資源管理
・人件費管理
・計数管理
・業務管理
・リスク管理
などがあります。
そこで、経営管理が不十分で、私が実際に直面した具体的なケースから、経営管理を考えてみたいと思います。
① 売上を伸ばすため、急激な出店を行って、不採算店舗が多数発生したケース
このケースでは、マーケティング調査が不十分で事業採算の把握が甘かったこと、事業の拡大に人材育成が追いつかなかったなどの経営管理ができていなかったケースです。
② 不良在庫を多く抱えてしまったケース
過大な売上計画に基づいた仕入を行ったものの、売上が計画通りにいかなかった場合や、仕入計画も持たずに、良いと思った商品をドンドン買ってしまった場合などが考えられます。この場合は、売上計画の妥当性の検証が不十分であった、仕入計画作成が不十分であったという経営管理の欠如と言えます。
③ 必要以上に社員数を増加させたり、必要以上に立派な事務所を賃貸したりして、固定費を大幅に増やしてしまったケース
売上が順調に伸びてくると、すぐに社員数を増やしたり、家賃の高い立派な事務所に移転したりする会社は、売上の伸びが止まった段階で、高くなった固定費を吸収できずに、利益を大幅に減らしたり、赤字になったりします。このケースでは、固定費管理が不十分であったという経営管理の欠如と言えます。見栄っ張りな経営者が陥りがちな典型例ですが、経費についてはギリギリまで増やさない、過度な贅沢はしないことが、会社を長く存続させるポイントであると、私は考えます。
④ 経営者の暴走を止められなかったケース
先ほども述べましたが、経営者は事業拡大欲が非常に強いものです。このこと自体が悪いわけではありませんが、成長のスピードが自社の経営管理体制のレベルを超えた場合、経営に歪みが発生します。つまり、「攻め」と「守り」のバランスが取れなくなってしまったということです。経営者に対してはなかなか意見できないものですが、「経営者の参謀」や「CFO」は、「歯止め機能」、「牽制機能」を十分に発揮しなければいけないと、私は考えます。逆に、健全な成長を果たすためには、「歯止め機能」、「牽制機能」を発揮する「経営者の参謀」、「CFO」が必要不可欠であるということです。最近であれば、経営者の暴走を止められなかったケースとして、ニデック(旧日本電産)の永守さんがまさに、このケースに当たります。
以上、いくつかの例を見ながら、経営管理の重要性について述べてきましたが、企業の目的が、「利益をあげること」であるという原点に立ち返って、自社の経営管理を今一度見直して、健全な成長を実現して頂きたいと切に思う次第です。
(執筆:現場経営の達人)